被相続人が自らの意思で家庭裁判所に推定相続人の廃除を申立てたり、廃除を取り消したりすることができますが、推定相続人の廃除に関する審判が確定する前の遺産の管理について規定があります。
審判の確定は、相続人を確定させる重要な決定です。推定相続人には依然として法定相続権があるため、家庭裁判所による処分を命じて、遺産が不当に処分されないようにしたり、勝手に遺産分割協議を進めないようにしたりといった対応策が必要なのです。
推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理
第895条
1. 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2. 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
遺産の管理者の選定
家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることが可能です。相続財産管理人は、推定相続人が財産を勝手に処分するのを防ぎ、適切に財産を管理します。
管理人が選任された場合は、その管理人は民法27〜29条に定められた管理人と同じように適用されます。
遺産の凍結
銀行口座や不動産の名義変更を防ぐため、相続財産の一時凍結を金融機関や不動産登記所に依頼することも検討できます。特に、共同相続人がいる場合、無断での財産処分を防ぐ措置が重要です。
遺産分割の一時保留
審判確定前に遺産分割協議を行うことは避け、家庭裁判所の判断が出るまで相続手続きを進めないようにすることが推奨されます。誤って相続財産を分割してしまうと、後で無効になる可能性があります。
遺産の仮管理
家庭裁判所に「遺産の仮管理」を申し立てることも可能です。これは、特定の相続人に対して、遺産の管理を委ねる制度で、推定相続人による不正な資産流用を防ぐ効果があります。
民法27条
1. 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2. 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3. 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる
民法28条
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
民法29条
1. 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2. 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
推定相続人の廃除が確定した場合
家庭裁判所の審判が確定すると、その推定相続人は 法的に相続権を完全に失います。廃除された推定相続人が受け取るはずだった遺産は他の相続人に割り振られます。なお、遺留分を主張することもできません。
相続人がほかにいない場合は、遺産は最終的に国庫に帰属します。
推定相続人の廃除の取消しが確定した場合
廃除された推定相続人が取消しを認められた場合、相続人としての資格が復活します。本来の相続割合に応じた相続財産を取得する権利を取り戻すのです。
もし廃除が取り消される前に遺産分割協議が完了していたり、相続も完了していたりするケースでも、当該相続人は相続が発生したときから相続人であったことになるので、相続分が変動することになります。
ただし、第三者へ譲渡されている財産を取り戻せないこともあります。
