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相続は越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所 相続ガイド《財産分離後の支払いと優先順位》

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財産分離の手続きが始まると、次に問題になるのは相続債権者や受遺者に対して、どのように弁済(支払い)を行うかという点です。相続が開始すると、被相続人(亡くなった方)の債務は相続財産に属しますが、これをそのままにしておくと、誰がどれだけ支払われるのかが曖昧になり、争いが生じやすくなります。

そのため民法は、相続債権者や受遺者が公正に弁済を受けられる仕組みを整えています。
第946条〜第948条では、財産分離のあとに行われる弁済に関するルールが定められています。これらは、相続人・債権者・受遺者それぞれの権利を守るための「最終整理手続き」といえる部分です。

民法946条
第304条の規定は、財産分離の場合について準用する。

民法947条
1. 相続人は、第941条第1項及び第2項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2. 財産分離の請求があったときは、相続人は、第941条第2項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
3. 第930条から第934条までの規定は、前項の場合について準用する。

民法948条
財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行使することができる。この場合においては、相続人の債権者は、その者に先立って弁済を受けることができる。

民法304条
1. 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2. 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

物上代位の規定の準用

第946条は、物上代位という少し難しい概念を扱っています。これは、相続財産の中にある特定の物が失われた場合に、その代わりに得た金銭や保険金などに権利を及ぼせるというルールです。
たとえば、被相続人の所有していた建物が火災で焼失し、保険金が支払われたとします。
その保険金は、もともとの建物の「代わりの財産」として、相続債権者や受遺者が弁済の対象にできるのです。

また、被相続人の所有物を売却した場合にも、その売却代金が物上代位の対象となります。
要するに、第946条は「元の財産が消えても、その代わりに得たお金までをも弁済の範囲に含めることができる」と定め、債権者の保護を強化しているのです。

相続債権者および受遺者への弁済手続き

第947条では、財産分離請求後に行われる弁済の流れが規定されています。この条文の目的は、すべての債権者や受遺者が公平に弁済を受けられるようにすることです。
相続人は、財産分離の請求が行われてから一定期間(配当加入の申出期間)が終了するまでの間、勝手に支払いをしてはいけません。この期間が過ぎると、債権者全員の債権額に応じて、相続財産をもとに弁済を行います。
つまり、「誰がどれだけ支払われるか」は、債権の額と順位に基づいて公平に決められるということです。

さらに、民法947条3項では、優先権を持つ債権者(担保付き債権者など)の権利を害してはいけないと定めています。
たとえば、抵当権付きの不動産がある場合には、抵当権者がまず弁済を受け、その残りが他の債権者に配分されます。

このように、財産分離の弁済は「先に申出をした者が勝ち」という単純なものではなく、民法上の優先順位に従って厳格に処理されるのです。

相続人の固有財産からの弁済

第948条は、一見すると財産分離とは関係が薄いように見えますが、実は非常に重要な規定です。相続人自身が自分の財産(固有財産)から弁済をするケースを想定しています。

たとえば、相続財産だけでは債務をすべて返済できない場合、相続人が自分の財産を使って弁済することがあります。
このとき、相続人は他の債権者よりも優先して支払いを受けることができます。

つまり、自分の財産を使って相続債務を清算した場合、その分を相続財産から先に回収できるということです。これは一見、相続人に有利なように見えますが、裏を返せば「自分の財産を使ってまで相続債務を整理した場合の救済措置」とも言えます。
民法は、相続債権者と相続人の利益のバランスを取るため、このような優先的な取扱いを認めているのです。

公平性を保ための注意点

財産分離後の弁済では、相続債権者・受遺者・相続人それぞれが利害関係を持っています。そのため、家庭裁判所の関与や専門家の監督のもとで進められるのが原則です。

また、弁済は単に「支払う」という行為にとどまりません。相続財産の評価、債権の確定、登記や公告など、複雑な手続きが必要になります。特に不動産や保険金など、代替財産(物上代位の対象)が絡む場合は、専門知識が欠かせません。

さらに、弁済の際に特定の債権者だけを優遇すると「不当弁済」として無効とされるおそれがあります。公平を欠く支払いは、後の訴訟や相続人間の紛争につながるため、慎重に行わなければなりません。

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