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相続は越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所 相続ガイド《第二種財産分離―財産分離の完結と債権者保護の仕組み》

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相続が発生し、財産分離の手続きが進んでいくと、最終段階では「弁済をどのように行うか」「どこまで財産を分離できるのか」という問題が生じます。民法第949条・第950条は、この最終段階における手続きを定めた規定です。

財産分離の目的は、相続人の固有財産(自分の財産)と被相続人の財産を混ぜないことにありますが、債権者や相続人の関係が複雑な場合、どちらの財産から支払いがなされるのかを明確にする必要があります。

民法949条
相続人は、その固有財産をもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。

民法950条
1. 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
2. 第304条、第925条、第927条から第934条まで、第943条から第945条まで及び第948条の規定は、前項の場合について準用する。ただし、第927条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない。

財産分離の請求を防止する制度

第949条は「財産分離の請求の防止等」に関する規定です。ここでは、相続人が自分の財産(固有財産)を使って相続債権者や受遺者に弁済したり、担保を提供したりすることで、財産分離の請求を防げると定めています。

たとえば、被相続人の債権者が「財産分離を求めます」と申し立てる前に、相続人が自ら債務の弁済を行えば、もはや財産分離の必要はなくなります。これは「自分で支払うなら、裁判所の手続きを通してまで分離する必要はない」という合理的な仕組みです。

ただし、注意すべき点として、債権者が損害を受けるおそれがある場合には、相続人が弁済してもその効果を否定される可能性があります。つまり、形式的な支払いだけではなく、実質的に債権者の利益を害していないかが重視されるということです。

また、相続人が支払いを済ませた、あるいは担保を提供したと主張しても、債権者が異議を申し立てることができます。この場合、家庭裁判所が弁済の有効性を判断し、債権者の立場を守る仕組みになっています。

相続人の債権者による財産分離請求

第950条では「相続人の債権者による財産分離」が定められています。ここでは、被相続人の債権者ではなく、相続人自身の債権者が登場します。

たとえば、相続人Aが生前に多額の借金を抱えていた場合、Aの債権者(たとえば金融機関など)は、Aが被相続人の財産を相続したことで自分の債権回収が不利になる可能性があります。
もし相続財産とAの固有財産が混ざってしまえば、どちらが誰のものかが不明確になり、債権回収が困難になるおそれがあります。

このような事態を防ぐため、民法950条は「相続人の債権者」が家庭裁判所に対して財産分離を請求できる権利を認めています。つまり、被相続人の財産と相続人の財産をはっきり区別することで、相続人の債権者も安心して回収ができるようにしているのです。

民法950条の第二種財産分離

第950条で定められているのは「第二種財産分離」と呼ばれるものです。第一種財産分離(第941条以下)は被相続人の債権者や受遺者が申し立てるものですが、第二種は相続人の債権者が申し立てるものです。相続人の債務超過(借金が多い)場合、被相続人の財産が巻き込まれるのを防ぐために行われます。

たとえば、相続人Bが借金まみれで破産寸前というときに、Bが親の遺産を相続すると、その遺産までBの債権者に差し押さえられてしまう可能性があります。これでは、他の共同相続人や被相続人の債権者に不利益が生じます。

そこで、家庭裁判所の判断によって、被相続人の財産を相続人の債務から切り離す=第二種財産分離を行うのです。

第二種財産分離の要件と効果

第二種財産分離を請求できるのは、相続人の債権者(あるいは相続開始後にその地位を得た者)です。請求の時期は、相続人が限定承認を行える期間、つまり「相続開始を知ってから3か月以内」とされています。この間に家庭裁判所に申立てを行い、相続人の債務が相続財産と混ざるおそれがあることを証明しなければなりません。

財産分離が認められると、被相続人の財産と相続人の固有財産は法律上明確に区別されます。
このため、相続人の債権者は、相続人の個人財産からしか弁済を受けることができず、相続財産には手を出せなくなります。

逆に、被相続人の債権者は相続財産を優先的に取り扱えるため、両者の利害が整理されるのです。
また、この手続きには、物上代位(第946条)、公告(第927条)、配当の原則(第948条)など、これまでの財産分離に関する規定が準用されます。
つまり、第二種財産分離も第一種と同様に、厳格な裁判所手続きのもとで行われるものです。

実務におけるポイント

実務では、第二種財産分離の申立てが行われるケースは多くありません。なぜなら、相続人の債権者が実際に家庭裁判所へ申し立てを行うためには、相続人の資産状況や相続関係を詳細に把握しておく必要があるからです。しかし、破産・債務整理などの場面では、この制度が非常に有効です。

たとえば、親の遺産が多額で、相続人が自己破産中の場合、相続財産をその破産財団から切り離すためにこの手続きが使われることがあります。

その結果、相続人の債権者は自分の債権を回収しやすくなり、他方で被相続人の債権者も相続財産を確保できるという、公平な清算が実現されます。

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