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相続は越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所 相続ガイド《相続とは》

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相続とは

相続とは、亡くなった方の財産を配偶者や子などが相続人となって引き継ぐことです。相続は被相続人が亡くなったことにより当然に発生し、自動的に相続人に受け継がれることを意味しますが、相続人が複数人いたり、相続財産がプラスの財産だけでなく負債などのマイナスの財産も対象となります。相続の手続きは相続人にとって大きな負担となる場合もあるため、早めに取り掛かることが重要です。

01相続とは

相続について、民法の法文をもとに解説します。はじめて相続をする方に向けた解説をしていますので、できるだけわかりやすい言葉で表現するようにしています。当事務所は相続・遺言・相続放棄を専門とした司法書士・行政書士事務所です。相続をするにあたって、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。

相続とは

ある人が亡くなったとき、その人の財産や権利・義務を残された家族や親族などが受け継ぐことを指します。亡くなった人は被相続人といいますが、被相続人の財産は、法律で定められた相続人に分配され、遺産となって引き継がれます。

相続の開始と場所

第882条 相続は、死亡によって開始する。

相続の開始とは、法律上、相続がはじまることを指し、具体的には被相続人の死亡によって相続が開始されます。相続開始によって、被相続人の財産や権利・義務が相続人に引き継がれることが可能になります。

被相続人の死亡は、自然死(病気や老衰など)や事故死のほか、法律上の死亡と見なされる「失踪宣告」も含まれます。生死不明の者に対する失踪宣告は、失踪者を死亡したとみなすことで相続が開始されます。認定死亡(生死を確認できない場合に、行政が死亡したと認定する制度)を受けた者も相続が開始されます。

通常失踪:行方不明となってから7年間が経過した場合。
特別失踪:戦争や大災害など危難に遭遇し、その後1年以上生死が不明な場合。

第883条 相続は、被相続人の住所において開始する。

相続が開始する場所についてを規定しています。相続が開始される場所は、被相続人の財産の所在地などに関わらず、死亡当時の住所です。相続に関する手続きや紛争の裁判管轄を統一する目的で規定されています。たとえば、埼玉県で暮らす者が北海道で死亡した場合、相続は所在地である埼玉県で開始されます。

相続に関する手続き(例えば、遺言書の検認や遺産分割調停など)が必要な場合、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことになります。

相続に関する争いが生じた際の裁判所の管轄

相続に関する争いが生じた場合や、遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申立てることができます。

申立て先の家庭裁判所:申立ては、通常、被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所に行います。例えば、被相続人が東京都に住んでいた場合は、東京都を管轄する家庭裁判所が対応します。

不動産が他県にある場合:不動産が他の地域にある場合でも、被相続人の住所地を基準とするため、別途手続き場所を変更する必要はありません。

相続開始後の主な手続き

相続開始が確認された後、相続人はさまざまな手続きが必要です。
さまざまなケースがあるため、あくまでも一例ではありますが一般的な流れは次のとおりです。

  1. 相続人と相続財産の調査
    まず、誰が相続人であるかを確認し、被相続人が残した財産(プラスの財産)や負債(マイナスの財産)を調査します。
  2. 遺言書の確認
    遺言書がある場合、遺産分割の内容が遺言書にしたがって進めます。家庭裁判所で遺言書の検認が必要な場合もあります。
  3. 相続放棄・限定承認の検討
    相続人は、被相続人の負債も相続することになります。負債が多い場合は、相続放棄や限定承認(簡単にいうと、財産の範囲内での負債返済)を選択することが可能です。これらの手続きには、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で申請する必要があります。
  4. 遺産分割協議
    相続人全員が協議し、遺産の分割方法を決定します。法定相続分に従って分割することもありますが、相続人全員の合意があれば異なる分割方法も可能です。
  5. 名義変更手続き
    不動産や預金などの名義を変更し、相続人に正式に相続財産を引き継ぎます。

特に注意が必要なのは、相続放棄の期限です。相続放棄や限定承認は、相続開始を知ってから3か月以内という期限があるため、財産や負債の内容は早めに確認することが重要です。

時系は参考です。一例として、一般的な時系を参考にしています。

02相続権や相続財産を回復する権利

相続回復請求権

不当に相続権を奪われた正当な相続人が、その相続権や相続財産を回復するために行使できる権利を相続回復請求権といいます。

第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

相続回復請求権の意義

本条は、相続回復請求権が5年または20年の制限があることを規定しています。相続回復請求権とは、相続人ではない者が相続財産を占有している場合に、真正の相続人が相続人としての法的地位を回復するための制度です。

原告と被告の適格

相続回復請求権の原告適格を有しているのは、相続権を侵害されている真正の相続人です。相続回復請求の相手方は、相続回復請求をされることによって有利であるという考えもできます。判例では、表見相続人は、自らが相続人ではないことを知っているか、または相続権を有する根拠がないと認識しているとき、その表見相続人に対する請求は本条の消滅時効に服しないとしています(最大判昭和53年12月20日)。さらに、表見相続人によって排除された共同相続人が、共有持分の登記を求める請求も、本条の相続回復請求であるとして、次のように運用されています。

  1. 財産を支配している一部の共同相続人が、他にも共同相続人がいることを知っていて、相続財産のうち一部の者の本来の持分を超える部分が、他の共同相続人の持分であると知りつつ、本来の持分を超える部分も自分の持分だと主張していた場合には、相続財産を支配している共同相続人に対する請求は、相続回復請求権にあたらない。
  2. 相続財産を支配している共同相続人が、他にも共同相続人の存在を知らずに、明らかな相続人である事由がなく、本来の持分を超える部分も自分の持分だと主張していた場合も相続回復請求権にあたらない。

別の判例では、他の共同相続人の存在を知らず、善意かつ合理的事由があったことの主張と立証責任は、相続侵害の開始時点であるとしています(最一小判平成11年7月19日)。

表見相続人から相続財産を譲り受けた第三取得者に対する請求が、相続回復請求権にあたるかは明確ではないとされていますが、旧民法下の判例で、相続回復請求権にあたらないとされました(大判昭和4年4月2日)。相続回復請求権にあたらない場合、第三取得者へ相続財産を譲渡した表見相続人が、善意かつ合理的事由がなかったとして時効を援用できない場合に、第三取得者も同様に援用できないとしています(最三小判平成7年12月5日)。

なお、表見相続人とは見かけ上は相続人であると判断されるものの、実際には正当な相続権がない人を指します。

相続回復請求権の時効

相続権を侵害された事実を知った時とは、真正相続人が、自分が真正相続人であり相続から排除されていることを知った時点です。つまり、相続を知っただけではなく、自分が相続人であることを知り、さらに相続から排除されていることを知らなければなりません。

また、相続が開始になった時点から20年が経過すれば、相続権を侵害された事実を知っているかどうか、の問題は関係なく、相続回復請求権は時効となって消滅し行使できなくなります。

表見相続人の取得時効

表見相続人は消滅時効の期間が進行している間の取得時効(権利を取得すること)を否定した判例がありますが、現在では、取得時効を肯定した見解も有力です。

相続回復請求権が必要になるケース

  1. 非相続人が相続手続きをした場合
    被相続人の親族でない人が偽造された遺言書などを使って財産を相続しようとした場合。
  2. 他の相続人による単独占有
    兄弟姉妹などの相続人の一人が、他の相続人の同意なく財産を独占した場合。
  3. 相続財産の贈与や売却
    不法占有者が第三者に相続財産を贈与または売却した場合でも、正当な相続人は相続回復請求権を行使できます。

03相続の効力

相続の効力とは、被相続人の財産や権利・義務が相続人にどのように移転されるか、その影響や法律的な効力が発生することです。相続の効力には、法律で定められた権利義務の承継や、相続人の権利の範囲、相続財産の分割などが含まれます。

相続の一般的効力

第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続人は相続が開始すると、被相続人の財産について、すべての権利義務を相続します(包括承継といいます)。すべての権利義務というのは、預貯金や不動産はもちろん、被相続人に借金があった場合に、借金を弁済する権利義務も相続するということになります。さらに、財産法上の法的地位やそれにかかわる事情も含まれます。たとえば、売買契約の売主で契約の債務を果たしていなかった場合に、相続人は契約上の地位を承継して、売主として買主との関係を引き継ぎます。

ただし、権利義務の性質上、被相続人しか持つことができないもの(被相続人の一身に専属したもの)は、権利義務から除かれます。被相続人しか持つことができないものとは、親権や扶養義務、代理権、雇用の権利や義務、資格、生活保護の権利、公営住宅の使用権などです。

なお、ゴルフクラブの会員権の扱いは、会則などに会員としての相続に関する規定がなくても、会員としての地位の譲渡に関する規定がある場合には、その規定に準じた手続きによって、会員としての地位を承継できるという判例があります(最三小判平成9年3月25日)。

被相続人の死亡を原因としても契約または法の規定によって相続人である者が固有の権利として取得するものは、本条の一切の権利義務に含まれません。なぜなら、固有の権利は相続財産ではないからです。

死亡退職金や生命保険の相続

死亡退職金とは、従業員の死亡に際し勤務先から支払われる退職金ですが、受け取る権利を持つ者の範囲や順位が定められています。判例では、勤務先の規定に基づいて支給された死亡退職金について、受給者である遺族が自己固有の権利として取得するとしました(最一小判昭和55年11月27日)。また、退職金支給の規定がない財団法人が支給した死亡退職金についても、財団法人の規定に基づいて支給同様に受給者である遺族が自己固有の権利として取得するとしました(最三小判昭和62年3月3日)。

生命保険については、保険金の受取人を遺族のうちの特定の者が指定されていた場合には、その指定された者が固有の権利として生命保険金を取得します。判例で、生命保険金の受取人に『相続人』という指定があった場合にも、相続人は固有の権利として生命保険金を取得しています(最三小判昭和40年2月2日)。このとき、相続人が複数あった場合に、『相続人』という指定は民法427条にいう『別段の意思表示』にあたるとして、各相続人は相続分の割合によって保険金請求権を取得するとしました(最二小判平成6年7月18日)。

また、保険金受取人の指定がされていない損害保険契約で『保険金受取人の指定がないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う』という旨の約款条項により保険金が支払われた判例(最二小判昭和48年6月29日)がありますが、受取人は原則、固有の権利として保険金を取得すると解されています。

相続の効力の主な内容

プラスの財産とマイナスの財産

相続人は、被相続人が持っていた財産だけでなく負債も同様に引き継ぎます。そのため、相続する財産よりも負債が多い場合には、相続放棄や限定承認を検討することが多いでしょう。

相続分

各相続人の権利の範囲(相続分)は、民法で定められた法定相続分や、被相続人が残した遺言書による指定相続分にもとづいて決定します。法定相続分は相続人の関係によって異なり、遺言書がある場合には、その内容が優先されます。遺言書に分割割合が記されていても、相続人全員が合意することで遺言書の内容とは異なる分割をすることも可能です。

遺産分割の効力

相続財産は相続人らの話し合い(遺産分割協議)によって分割されますが、分割の前であっても法的な効力はすでに生じています。遺産分割が行われると、各相続人が相続財産を単独で所有することになります。遺産分割後は、相続財産の各部分についての権利が確定します。

相続放棄・限定承認の効力

相続人が相続放棄を行うと、その相続人ははじめから相続人でなかったとみなされ、被相続人の財産や負債を一切引き継ぎません。また、限定承認を行う場合は、相続した財産の範囲内でのみ負債を支払う義務を負うことになります。これらは相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があり、家庭裁判所で手続きします。

相続の効力の例外

生前贈与などの特別な受益がある相続人がいる場合は、特別受益分を相続分から控除する調整が行われます。
さらに、被相続人の財産の維持や増加において、特に貢献した相続人がいる場合、その相続人の寄与分を加味して相続分を算出することもあります。

04共同相続の効力

共同相続の効力

第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

本条は、相続の開始から遺産分割までの共同相続人間の関係についてを定めています。

相続人が一人の場合は、被相続人の相続財産は単独で承継します。しかし相続人が複数人いる場合には、相続財産を全員が共有することになります。

遺言を残さなかった場合や遺言に残されていない相続財産がある場合は、遺産分割協議という相続人間での話し合いをすることになります。

相続財産の管理

共同相続財産の管理は、以下のような物権編の共有の管理規定によります。

  1. 相続財産の保存行為は各相続人が単独ですることができる
    保存行為とは、財産の状態を維持する行為のことです。たとえば、家屋の修理費や諸経費、相続人全員を名義人とする不動産登記、金融機関への被相続人名義の口座に関する取引経過の開示請求などです。
  2. 各相続人は相続財産の全部について、相続分に応じた使用ができる
  3. その他の管理に関しては、相続分の割合にしたがい多数決で決定する
    その他の管理とは、財産を利用・改良する行為のことです。たとえば、資料の取り立て、賃借契約の解除などのことです。
  4. 相続財産に変更を加え、または処分する場合には、他の相続人の同意を得る必要がある管理にかかる費用は相続分に応じて負担するものとされる
  5. 管理にかかる費用は相続分に応じて負担するものとされる

※ただし、すべてにおいて物権編の共有の管理の規定にしたがうというわけではありません。

遺産分割協議が終わるまでの間、土地や不動産などについて費用がかかったり、保険料や修理費などの諸経費が発生したりする場合があります。そのような場合の管理について、共同相続人間でスムーズに合意ができれば問題ありませんが、なかなか合意ができない場合にどう精算するかが問題になります。

相続財産に関する費用というのは、民法885条で規定されています。

第885条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。

相続財産に関する費用は、前述と重複しますが、固定資産税、火災保険料、修繕費、遺産の保全費用、鑑定費用などが含まれます。通常、相続財産を承継した相続人が、どう支払いをするかを決定します。しかし、相続放棄や限定承認の場合に、相続人が存在しない相続財産となり、それら費用を支払う人がいない状態になります。その場合に、相続財産から費用を支払うというのが本条の規定です。

そのため、相続人が複数ある場合には、相続財産に関する費用を支払った相続人が、他の共同相続人に対し費用の償還請求をすることができます。

参考(物権編の共有の規定)

少し長いですが、物権の共有の第251条から第253条を掲載します。

第251条
1.各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2.共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

第252条
1.共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。) は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2.裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
(1)共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
(2)共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3.前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
4.共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
(1)樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
(2)前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
(3)建物の賃借権等 三年
(4)動産の賃借権等 六箇月
5.各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第253条
1.各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2.共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

05預貯金の相続

銀行や郵便局などの預貯金は代表的な財産のため、ほとんどのケースで相続人同士で分割することになります。しかし原則として本人、または代理人しか預貯金口座から引き出すことができませんので、所定の手続きで相続人名義に変更しなければなりません。

被相続人の口座の凍結

被相続人が亡くなった際に、被相続人が名義人である口座の金融機関に連絡し、死亡した事実を伝えなければなりません。金融機関に連絡をすると、被相続人が名義人の口座は凍結されます。口座が凍結されると、キャッシュカードや通帳による引き出し・入金、他の金融機関口座からの振り込み、公共料金やクレジットカードなどの支払い、株式の配当金の振り込みなど、すべてができなくなります。
逆にいうと、金融機関に連絡をしない限りは、基本的に口座は凍結されません。

口座が凍結されるのは、相続人が正式にその口座の権利を引き継ぐまでの間に、不正な引き出しや利用を防ぐためです。

相続人が誰か確定していない

被相続人が死亡すると、最初は誰が相続人であるかが明確ではありません。相続人が確定していない段階で口座を引き出すことができてしまうと、不正な資金移動や不公平な扱いが発生する可能性があります。したがって、金融機関は相続人が正式に決定するまで口座の取引を凍結して、誰がその口座を引き継ぐかを確認します。

相続手続きが進行していない

相続手続きが完了するまで、口座の名義変更や資産の引き継ぎが行えません。相続手続きには、死亡届の提出、相続人の確認(戸籍謄本など)、相続放棄や遺産分割協議書の作成などが含まれます。これらの手続きが済んでいない段階では、第三者(相続人以外の者)が故人の口座を勝手に利用するのを防ぐため、口座を凍結する必要があります。

法的な確認と防止措置

故人の預金や金融資産を相続人に引き継ぐ前に、その相続権を有する者が確定しているか、適切に手続きされているかを法的に確認する必要があります。金融機関は、相続人に対して相続手続きに必要な書類(戸籍謄本や遺言書など)を求めるため、これらの確認が取れるまで凍結措置を取ることで不正アクセスを防いでいます。

不正利用の防止

被相続人の死亡後、誰かがその口座を不正に操作しようとするリスクを減らすために、金融機関は口座を凍結します。これにより、死後に口座の不正引き出しや第三者による悪用を防ぐことができます。

遺言書の存在確認

被相続人が遺言書を残している場合、遺言の内容を確認する必要があります。遺言書にもとづく相続がなされる場合、遺言内容や協議が確定するまでは口座が動かないようにしておくための措置です。

預貯金の名義変更と相続人の口座名義変更

預貯金の相続においては、相続人が故人の口座を引き継ぐために名義変更の手続きが必要です。

  • 名義変更の手続き
    相続人が金融機関に対して故人の口座を引き継ぐためには、必要書類を提出し、口座名義を変更する手続きを行います。
  • 共同名義口座の場合
    共同名義の口座がある場合は、口座名義をどうするかについて、相続人間で合意を取り付ける必要があります。

預貯金の分割

預貯金も他の財産と同様に相続分にしたがって分割されます。相続分は法定相続分、または遺言書にもとづいて決定します。

  • 法定相続分
    民法にもとづき、配偶者や子どもが相続人となった場合、相続分が決まります。たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者2分の1、子ども2人でそれぞれ4分の1ずつ相続します。
  • 遺言書による指定
    遺言書で特定の相続人にいくら、という指定がされていれば、そのように分割されます。遺産分割協議によって相続人全員の合意があれば、遺言書による分割とは異なる割合で分割することも可能です。

遺産分割協議と預貯金の分配

相続人間で遺産分割協議がされますが、預貯金は現金のため、実際に相続人に分ける際には口座を分けたり、現金を引き出して分配する方法がとられることが一般的です。遺産分割協議によって分割の割合が決定したら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名・押印をして、各金融機関で遺産分割協議書をもとに手続きをすることになります。

06土地・建物などの不動産の相続

不動産の相続は、被相続人が所有していた不動産(土地や家、マンションなど)を相続人が引き継ぐ手続きです。不動産の相続には遺産分割や登記など、重要な手続きがあります。

いわゆる相続トラブルの原因にもなりやすいのが不動産で、物理的な分割が難しいという問題もあります。相続人が多数にわたる場合は特に注意が必要です。

また、不動産を相続することによって、維持費や固定資産税などの経費がかかることも考慮しておかなければならないポイントです。

不動産の相続

不動産を相続する際、一般的な流れは次のとおりです。

(1) 相続人の確認

被相続人の相続人を確定します。法定相続人(配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など)の範囲や相続順位を確認し、戸籍謄本を取得して相続関係を明確にします。

(2) 遺産分割協議

不動産は相続人全員の共有財産となります。遺産分割協議を行い、各相続人の同意のもとで不動産を誰が取得するか決定します。合意が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申立てることも可能です。

(3) 相続登記

不動産を取得する相続人が決まったら、法務局で「相続登記」(所有権移転登記)を行います。これにより、正式に不動産の所有者として登記が変更され、相続人の名義になります。登記手続きには、遺産分割協議書、戸籍謄本、不動産の評価証明書などが必要です。

不動産相続における分割

不動産は分割が難しいため、遺産分割でトラブルになることが少なくありません。
次のような分割方法で相続することが一般的です。

現物分割:特定の不動産を1人の相続人が取得する。
代償分割:不動産を1人の相続人が取得し、他の相続人にその代わりとなる金銭を支払う。
換価分割:不動産を売却して現金化し、相続人で分配する。
共有分割:不動産を共有名義で取得するが、後々の管理や売却が難しくなる可能性がある。

相続登記名義変更

相続登記名義変更は、相続人が相続財産を正式に取得するために必要な手続きです。特に不動産の相続では、相続登記を行うことで名義が法的に変更され、相続人がその不動産を所有していることが証明されます。相続登記を行わないと、不動産の売却や担保設定などの権利行使ができません。相続をしたら速やかに手続きをしなければなりません。

相続による所有権移転登記は、相続人の単独申請です。
遺産分割、相続放棄、あるいは特別受益者に該当することにより、相続人の一部が不動産を取得した場合の相続登記は、当該不動産の所有権を取得した相続人のみが申請人となり、相続登記名義人となります。

相続登記の義務化

共有状態が長く続いた不動産は、とても複雑な状態で管理(実際には管理されていなくても)されているケースも多く、しかも放置してはいけない問題でもあります。
2024年4月1日以降、相続登記が義務化されています。義務化により、不動産を相続した場合には正当な期限内に登記を行わなければなりません。違反した場合には罰則が科されることもあります。
詳しくは相続登記義務化についてにて説明しています。

不動産の相続登記名義変更は、複雑で手間のかかる手続きのひとつです

不動産の相続登記名義変更は、複雑で手間がかかることが多い登記手続きのひとつです。手続きに必要な書類が多いことはもちろん、相続人が複数いる場合の遺産分割協議は複雑になります。長年、名義変更を放置されていたり、相続人が増え、利権関係が複雑化していると大変な手続きになることは確実です。

07祭祀財産の相続

祭祀財産の相続については、通常の相続財産とは異なる取り扱いがされます。民法では、祭祀財産の取り扱いについて特別な規定があります。

祭祀財産の相続

第897条
1.系譜、祭具および墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

1947年に家督相続制が廃止され、祭司に関しては平等相続の督促が定められました。系譜、祭具、墳墓、を相続財産からはずし、一般の相続とは区別して承継者を定める規定です。

系譜先祖から子孫に至る一族代々の図表である家系図
祭具位牌、仏壇、仏像、神棚、神体、神具、仏具、庭内神祠などの祭祀や礼拝に用いる器具や道具
墳墓墓地、墓石、墓碑など
系譜、祭具、墳墓について

本条は、系譜や祭具、墳墓などの祭祀財産は、被相続人が暮らしていた環境の慣習によって、承継する人を決定することを規定しています。ただし、被相続人が遺書を残すなどして祭祀財産を承継する人を指定していた場合は、指定された人が承継します。指定された人は、原則断ることができませんが、他の人に権利を譲ることはできます。遺言がなくても、口頭や書面などの生前行為でも差し支えないとされています。

慣習による決定は実は少ないケースです。その地域の慣習や属した職業などの慣習を明らかにすることが難しいためです。

さらに二項では、遺言書による指定がない場合、暮らしていた環境の慣習が明らかでない場合、祭祀財産を引き継ぐ人は家庭裁判所が決定することになります。家庭裁判所で「祭祀継承者指定の申立て」という手続きで祭祀財産を引き継ぐ人が決定します。

家庭裁判所は、被相続人との関係や祭祀財産を引き継ぐ意思や能力があるかなどを基準に調停がなされるようです。たとえば、長男であるとか、氏(苗字)が同じであるとか、親族かなどを問うのではなく、生活上の関係や、これまで墓地を管理していたかなどが重視されています。

なお、祭祀財産を承継するのは一人とは限りません。複数人で分けた判例も存在しました(東京高判昭和62年10月8日)。系譜と墳墓を別々に承継するというような分け方です。

祭祀財産を承継した者の地位

祭祀財産を承継した人に祭祀を行う義務が生じるわけではありません。通説では、祭祀財産の承継に承認や放棄の概念がありませんので、前述した通り、断ることができず辞退するなどができません。ですが、承継した後に、祭祀財産の処分は承継した人の自由です。

遺体・遺骨の承継

祭祀財産である墳墓に埋葬された遺体や遺骨は、祭祀を主宰するべき者に帰属する、と祭祀財産に含まれる判例があります(最三小判平成元年7月18日)。これに対し、通説は被相続人の遺体・遺骨の帰属について、慣習に基づいて喪主に帰属するという原始的な考え方もあるのは確かです。

遺産分割協議における扱い

祭祀財産は、通常の遺産分割に含まれず、相続人の合意によってどのように分けるかが決まります。祭祀財産は、特に遺族が祭祀を続けるために必要なものとして、相続の過程で特別に配慮されます。祭祀財産を引き継いだからといって、他の財産の割合が減ることはありません。上述のとおり、相続放棄をしたとしても祭祀財産は対象外であるため、相続放棄をしてお墓や仏壇が放棄されるということはありません。

08相続におけるプラスの財産とマイナスの財産

相続財産は、被相続人が残した財産や負債をすべて含みますが、これをプラスの財産とマイナスの財産に分けて考えます。

プラスの財産(積極財産)

プラスの財産とは、相続人が相続することで得られる資産です。具体的には、次のようなものが含まれます。

  • 不動産(土地、建物など)
  • 預貯金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 自動車
  • ゴルフ会員権
  • 動産(家具や家電、骨董品、貴金属、美術品など)
  • 生命保険
  • 債権
  • その他の資産(会社の株式など)

プラスの財産は、通常、相続人が相続することになります。遺産分割協議によって相続人間で分割して承継されます。

マイナスの財産(消極財産)

マイナスの財産とは、被相続人が残した負債や債務のことです。相続人は、これらの負債についても相続しなければならない場合があります。具体的には、以下のようなものがマイナスの財産に含まれます。

  • 借金(住宅ローン、カードローン、消費者金融など)
  • 未払いの税金(所得税、相続税、住民税など)
  • 未払いの光熱費や家賃(公共料金や住居費など)
  • 保証債務(第三者の借金を保証している場合)
  • その他の債務(取引先への支払い残高など)

プラス財産とマイナス財産の取り扱い

相続財産にはプラスとマイナスがあるため、相続人がどのようにこれらを引き継ぐかが問題になります。

相続人は、プラスの財産を受け継ぐ一方、マイナスの財産についても引き継ぐことになります。つまり、被相続人が残した負債についても相続人が負担しなければならないことになります。

相続する財産の中にマイナスの財産が含まれている場合、それを相続した場合の総額がマイナスになってしまうこともあります。そのため、相続人が負担する負債の額を慎重に確認することが重要です。

相続放棄をして財産を承継しない

被相続人が残した負債が多額にわたり、相続財産がマイナスになりそうな場合、相続人は相続放棄をすることができます。相続放棄をすると、その相続人は相続人としての権利も義務も一切なくなります。つまり、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことになります。

相続放棄の申し立ては、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。

相続人が受け継ぐ財産の範囲内で負債を負う限定承認

相続人は限定承認を選ぶこともできます。これは、相続人が受け継ぐ財産の範囲内で負債を負う方法です。たとえば、相続財産がプラスの財産が500万円で、負債が300万円の場合、相続人は500万円を限度として負債を支払うことができます。

限定承認をする場合も、家庭裁判所への申立てが必要で、相続放棄と同様に3か月以内に申し立てる必要があります。

相続財産の清算

相続手続きの中で、プラスの財産とマイナスの財産を相殺して相続人の負担を決めることになります。遺産分割協議や相続税の申告手続きのなかで、負債や資産の評価をして、相続財産の総額を確定するのです。最終的には相続人間の協議によって決定します。

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