代襲相続とは
代襲相続とは、相続人が相続開始前に死亡していた場合や、相続欠格や相続廃除によって相続権を失った場合に、その相続人の子(直系卑属)が代わりに相続する制度です(民法第887条第2項、第889条)。この制度は、相続権が一世代上から一世代下へ引き継がれる仕組みであり、血縁関係を重視する相続法の特徴を反映しています。
代襲原因
代襲相続が発生する主な原因は次のとおりです。
- 死亡
法定相続人が相続開始前に死亡していた場合、その子が代襲相続人となります。 - 相続欠格
相続欠格とは、法律で定められた重大な理由により相続権を失うことを指します(民法第891条)。
たとえば、被相続人に対する重大な犯罪行為が該当します。 - 相続人の廃除
被相続人が特定の相続人を遺言によって廃除した場合、その子が代襲相続人となることがあります(民法第892条)。
民法第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
1. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
民法第892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
代襲相続の効果
代襲相続が発生すると、代襲者は本来の相続人が受け取るはずだった相続分をそのまま引き継ぎます。ただし、代襲相続は代襲者が複数いる場合、均等に分割されます。また、代襲相続はさらに代襲されることが可能で、孫や曾孫といった直系卑属が次の代襲相続人となる場合があります。
代襲相続の代襲者となる者
兄弟姉妹の孫、配偶者、直系尊属について
- 兄弟姉妹の孫
兄弟姉妹が相続開始前に死亡していた場合、その子(甥・姪)は代襲相続人となります。ただし、兄弟姉妹の孫(甥姪の子)は代襲相続できません(民法第889条第2項)。 - 配偶者
配偶者は常に相続人であり、代襲相続の対象とはなりません。被相続人の配偶者が相続開始前に死亡している場合、その地位を代襲する者は存在しません。 - 直系尊属
直系尊属(親など)が相続開始時に存命していなければ、その地位を代襲する制度はありません。代襲相続は直系卑属に限定されます。
養子の子について
養子の子は、その養子を通じて被相続人と血縁関係があるとみなされる場合に限り、代襲相続人となります。養子が相続開始前に死亡していた場合、その養子の子(被相続人の孫に該当)は代襲相続人として相続権を持つことがあります。これは、養子と実子が同等の相続権を持つとする法律の規定によります。
養子である兄弟姉妹の子について
兄弟姉妹の代襲相続人は、相続権を失った者の子であると同時に、被相続人の血族でなければなりません。養子縁組前の兄弟姉妹の子は、養子を代襲して養親の他の子の相続財産を代襲相続できません。しか、養子縁組後に出生した兄弟姉妹の子は、兄弟姉妹をとおして、養親の他の子との間に法定血族関係が生じますので代襲相続人となります。
代襲相続人存在時期
代襲相続人は、相続開始時(被相続人の死亡時点)に生存している必要があります。代襲相続人が相続開始時にすでに死亡していた場合、その子が再代襲相続人となります。
再代襲相続
再代襲相続とは、代襲者がさらに相続開始前に死亡している場合に、その代襲者の子(被相続人の孫)が再び代襲相続人となる制度です。これにより、相続権はさらに次世代へ引き継がれることになります。
例えば、被相続人Aの子Bが相続開始前に死亡し、さらにBの子Cも死亡していた場合、Cの子Dが再代襲相続人となり、Aの相続分を受け継ぎます。