相続について、民法の法文をもとに解説します。はじめて相続をする方に向けた解説をしていますので、できるだけわかりやすい言葉で表現するようにしています。当事務所は相続・遺言・相続放棄を専門とした司法書士・行政書士事務所です。相続をするにあたって、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。
相続とは
ある人が亡くなったとき、その人の財産や権利・義務を残された家族や親族などが受け継ぐことを指します。亡くなった人は被相続人といいますが、被相続人の財産は、法律で定められた相続人に分配され、遺産となって引き継がれます。
相続の開始と場所
第882条 相続は、死亡によって開始する。
相続の開始とは、法律上、相続がはじまることを指し、具体的には被相続人の死亡によって相続が開始されます。相続開始によって、被相続人の財産や権利・義務が相続人に引き継がれることが可能になります。
被相続人の死亡は、自然死(病気や老衰など)や事故死のほか、法律上の死亡と見なされる「失踪宣告」も含まれます。生死不明の者に対する失踪宣告は、失踪者を死亡したとみなすことで相続が開始されます。認定死亡(生死を確認できない場合に、行政が死亡したと認定する制度)を受けた者も相続が開始されます。
通常失踪:行方不明となってから7年間が経過した場合。
特別失踪:戦争や大災害など危難に遭遇し、その後1年以上生死が不明な場合。
第883条 相続は、被相続人の住所において開始する。
相続が開始する場所についてを規定しています。相続が開始される場所は、被相続人の財産の所在地などに関わらず、死亡当時の住所です。相続に関する手続きや紛争の裁判管轄を統一する目的で規定されています。たとえば、埼玉県で暮らす者が北海道で死亡した場合、相続は所在地である埼玉県で開始されます。
相続に関する手続き(例えば、遺言書の検認や遺産分割調停など)が必要な場合、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことになります。
相続に関する争いが生じた際の裁判所の管轄
相続に関する争いが生じた場合や、遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申立てることができます。
申立て先の家庭裁判所:申立ては、通常、被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所に行います。例えば、被相続人が東京都に住んでいた場合は、東京都を管轄する家庭裁判所が対応します。
不動産が他県にある場合:不動産が他の地域にある場合でも、被相続人の住所地を基準とするため、別途手続き場所を変更する必要はありません。
相続開始後の主な手続き
相続開始が確認された後、相続人はさまざまな手続きが必要です。
さまざまなケースがあるため、あくまでも一例ではありますが一般的な流れは次のとおりです。
- 相続人と相続財産の調査
まず、誰が相続人であるかを確認し、被相続人が残した財産(プラスの財産)や負債(マイナスの財産)を調査します。 - 遺言書の確認
遺言書がある場合、遺産分割の内容が遺言書にしたがって進めます。家庭裁判所で遺言書の検認が必要な場合もあります。 - 相続放棄・限定承認の検討
相続人は、被相続人の負債も相続することになります。負債が多い場合は、相続放棄や限定承認(簡単にいうと、財産の範囲内での負債返済)を選択することが可能です。これらの手続きには、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で申請する必要があります。 - 遺産分割協議
相続人全員が協議し、遺産の分割方法を決定します。法定相続分に従って分割することもありますが、相続人全員の合意があれば異なる分割方法も可能です。 - 名義変更手続き
不動産や預金などの名義を変更し、相続人に正式に相続財産を引き継ぎます。
特に注意が必要なのは、相続放棄の期限です。相続放棄や限定承認は、相続開始を知ってから3か月以内という期限があるため、財産や負債の内容は早めに確認することが重要です。
時系は参考です。一例として、一般的な時系を参考にしています。