高齢単身社会の広がりによって、相続が「亡くなった後の話」ではなく、生前からすでに問題として始まっています。相続が実際に起きたあと、なぜ新たな問題が生まれやすいのかを整理します。
その中心にあるのが、「老老相続」と呼ばれる構造です。
老老相続とは
老老相続とは簡単にいえば、高齢者が亡くなり、その相続人となる配偶者も高齢である相続を指します。
特別な家庭の話ではありません。むしろ現在の日本では、最も一般的な相続の形になっています。長年連れ添った夫婦の一方が亡くなり、残された配偶者が自宅や預貯金を相続する。この流れ自体は、ごく自然なものです。
問題は、その相続が終わったように見える点にあります。
形式上、相続は終わる
老老相続の多くは、手続きとしては問題なく進みます。
- 相続人は配偶者のみ、あるいは配偶者と子ども
- 遺産分割でも大きな争いはない
- 不動産は配偶者名義に変更される
- 預貯金も配偶者が引き継ぐ
ここまでを見ると、「相続は無事に完了した」と感じるかと思います。実際、登記や名義変更といった手続きもきちんと終わります。
老老相続の問題「時間」
老老相続が問題になりやすい最大の理由は、時間が味方しないことです。相続を受けた配偶者は、すでに高齢です。数年後、場合によってはそれほど時間を置かずに、次の相続が発生する可能性があります。
つまり、今回の相続、その直後に控える次の相続が、ほぼ連続して起こる構造になっているのです。
この点を意識せず、とりあえず今回の相続を終わらせることだけに集中すると、次の相続が一気に複雑化します。
老老相続で起きやすいトラブル
よく現場で目にするのは、相続登記はしたがその後が動かない、配偶者名義に相続登記はしたものの、売却の判断ができない、施設入所にともなう処分が進まない、相続人本人が意思表示できなくなる、などのケースです。
結果として、不動産が動かせない資産になってしまいます。
配偶者が亡くなると、次の相続では、子ども、すでに亡くなっている子の孫、親族、というように、相続人が一気に増えることになる場合が多いです。
今回の相続では問題がなかったのに、次の相続で一気に話がまとまらなくなるという、老老相続では非常に典型的なパターンです。
判断能力低下のリスク・認知症のリスク
老老相続では、相続人本人の判断能力が低下している、あるいは低下するリスクが高い点、そして認知症のリスクがあります。
相続を受けた配偶者は高齢であることが多く、相続の直後は問題がなくても、数年のうちに判断能力が低下する可能性があります。
- 不動産を売却するかどうか判断できない
- 遺言を作成したくても、意思能力が認められない
- 相続手続きや財産処分について同意ができない
この状態になると、家族が代わりに判断することはできません。
相続は必ず次につながる出来事です。特に高齢社会では、その間隔が非常に短くなっています。
老老相続では、この時間とともに高まるリスクを前提に考える必要があります。
次に繋げる相続
相続は、相続登記をすることだけではありません。相続の各手続きを早く終わらせることだけでもありません。相続を、一度きりの出来事ではなく、連続する出来事として見据えなければなりません。
次の相続がいつ起きてもおかしくない、判断能力の問題が生じやすい、相続人が増える可能性が高い、という条件が重なるのが老老相続です。次の相続を想定したり、財産の行き先を考慮したり、手続きが滞らない形を対策する、ということを考えておくだけでも、のちの相続人の負担は大きく変わります。
相続は、終わらせることよりもつなげることが重要です。老老相続という言葉の裏には、その現実が隠れています。
