限定承認後、相続人は財産の管理義務を負います。特に不動産や動産などの処分を行うには、家庭裁判所の許可が必要です(民法第928条など)。これは、勝手な処分によって債権者の利益が損なわれるのを防ぐためです。
ただし、債務返済や財産の維持管理のためにやむを得ず処分する場合、許可を得れば可能です。処分した財産の代金は、債権者への弁済に充てることになります。
また、債権者との間でトラブルが起きた場合には、裁判所による調整や裁定を受けることができます。相続人が誠実に義務を果たしていれば、たとえすべての債務を返済できなくても、責任を問われることはありません。
限定承認は全員の一致が原則
限定承認は、共同相続人が一人でも反対した場合、制度の利用ができません。民法923条により、共同相続人がいる場合、限定承認は相続人全員の共同でしなければならないと定められており、個別に単独で行うことはできないのです。
仮に一人でも単純承認をしてしまった場合、他の相続人が限定承認を希望していても、それは認められません。この点で、限定承認は非常に繊細な制度であり、相続人間での合意形成が不可欠です。
たとえば、被相続人に借金が多くあると知った相続人Aが限定承認をしたいと思っても、相続人Bが内容を理解せず単純承認してしまうと、限定承認は成立しません。その結果、すべての相続人が単純承認扱いとなり、借金を個人の財産で返済する義務が生じます。
民法923条
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
公告と債権者への弁済手続き
限定承認が受理されると、相続人は相続財産を管理し、債権者や受遺者に対して弁済を行う義務を負います。そのためには、まず官報に公告を行い、一定期間内に債権者に申し出を促す必要があります。
この公告期間は2か月以上で、民法第927条〜第935条の規定に従って債権者の申し出を受け付け、優先順位に従って弁済します。相続財産が不足する場合は、全額返済できなくても構いませんが、財産の範囲内で誠実に処理しなければなりません。
限定承認後の管理義務と換価処分
限定承認後、相続人は財産の管理義務を負います。特に不動産や動産などの処分を行うには、家庭裁判所の許可が必要です(民法第928条など)。これは、勝手な処分によって債権者の利益が損なわれるのを防ぐためです。
ただし、債務返済や財産の維持管理のためにやむを得ず処分する場合、許可を得れば可能です。処分した財産の代金は、債権者への弁済に充てることになります。
また、債権者との間でトラブルが起きた場合には、裁判所による調整や裁定を受けることができます。相続人が誠実に義務を果たしていれば、たとえすべての債務を返済できなくても、責任を問われることはありません。
民法928条
限定承認者は、前条第1項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
限定承認と遺産分割の関係
限定承認を行った場合でも、相続人同士での遺産分割協議は可能です。ただし、債務の清算が優先されるため、遺産を自由に分けるには制限があります。
たとえば、借金の返済がすべて終わったあとで、残った財産を分け合うことは可能です。しかし、返済前に財産を先に分けてしまうと、債権者に対して不誠実な扱いとなり、法的責任を問われる可能性があります。
したがって、限定承認のもとで遺産分割を行う場合は、弁護士など専門家の指導を受けながら進めることが重要です。
単純承認との混在リスク
もし共同相続人の一部が限定承認を希望していても、他の相続人が先に単純承認をしてしまうと、全体の限定承認が不可能になります。これは民法上の非常に厳格な原則です。
たとえば、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどを相続人が勝手に行った場合、それが「単純承認」とみなされることがあります。これは、財産を処分するという行為が、債務も含めてすべてを承継する意思表示と解釈されるためです。
限定承認を選ぶ可能性がある場合は、慎重に行動し、専門家のアドバイスを受けてから対応する必要があります。
