厳格な手続きが必要とされる相続放棄ですが、こんなときはどうなる?と疑問をお持ちの方に、さまざまなケースを紹介しています。それぞれのご家庭で生じるケースを具体的に解説します。
よくわかる相続放棄の疑問集:トラブル・応用編4
Q1. 相続放棄手続きを進めていたところ、当事者が亡くなってしまいました。相続はどうなりますか?
相続放棄の申述をしていても、裁判所で受理される前に本人が亡くなった場合、その効果は確定しません。したがって、その人は相続人のまま亡くなったことになり、その人の相続人(子や配偶者など)が改めて相続する立場になります。
一方、申述がすでに受理されていれば、本人が亡くなっても「最初から相続人ではなかった」扱いになるため、その人の子などに相続は移りません。
Q2. 事実上の相続放棄とはどういうことですか?
法律上の相続放棄は家庭裁判所での申述によって行いますが、それとは別に「事実上の相続放棄」と呼ばれる考え方があります。
これは、遺産分割協議の場で、自分の取り分を一切主張せず、何も受け取らない行為を指します。ただし、これはあくまで相続分を放棄したにすぎず、借金や負債は残ります。
法律上の相続放棄(裁判所手続き)とは全く異なる点に注意が必要です。
Q3. 被相続人が亡くなって、すぐに預貯金は引き出した方がいいと助言されたので現金を引き出しました。相続放棄をするのに影響はありませんか?
影響があります。被相続人の口座から預金を引き出す行為は「財産の処分」とみなされる可能性が高く、相続放棄が認められなくなることがあります。
ただし、葬儀費用や生活費のためにやむを得ず引き出した場合、例外的に処分とはみなされないケースもあります。
不安な場合は、必ず家庭裁判所や司法書士などの専門家に相談してください。
Q4. 被相続人が飼っていたペットを引き取ることは相続放棄に影響しますか?
ペットは法律上「モノ」で扱い「動産」となり、原則は相続財産です。しかし、実務上は影響しないと考えられています。そのため、相続放棄をしても、遺されたペットを引き取ることは可能です。
似た性質で形見分けのようなものがありますが、一般的にペットに経済的価値があるとはいえませんので、形見分けと同様に引き取る考えがほとんどです。
ただし、ペットにかかる費用(医療費・飼育費)は引き取った人の負担になります。
稀に、そのペットの希少価値が高く、引き取って高額で売却できるなどの事情がある場合は、単純承認とみなされる場合もあります。
Q5. 共同相続人が、他の相続人に相談なしで相続放棄をしたようです。勝手に相続放棄をしていいのですか?
相談なしに相続放棄することができます。相続放棄は相続人一人ひとりが独立して行うものであり、他の相続人の同意や相談は不要です。
ただし、その結果として次順位の相続人(被相続人の親や兄弟姉妹など)に権利が移るため、トラブルを避けるために事前に話し合っておくことが望ましいです。
Q6. 遺産分割協議が済んだあとに、考えが変わったので相続放棄をすることはできますか?
できません。遺産分割協議に参加した時点で「相続を承認した」とみなされます。その後に放棄をしても無効となり、協議で決めた取り分や債務について責任を負うことになります。
放棄を検討している場合は、必ず協議の前に家庭裁判所へ申述してください。
Q7. 相続放棄をしても遺族年金は受け取れますか?
受け取れます。遺族年金や遺族厚生年金は、公的制度に基づく受給権であり、相続財産ではありません。そのため、相続放棄をしても受給資格を失うことはありません。
なお、受給するためには年金事務所などに所定の届出を行う必要があります。
Q8. 父の相続を放棄したのちに、叔父の相続はできますか?
できます。相続放棄の効果は「特定の被相続人についてのみ」およぶため、父の相続を放棄しても、叔父(父の兄弟)の相続には影響しません。それぞれの相続ごとに承認か放棄かを選ぶことができます。
