老老相続で知っておきたい相続人の変化と遺言の重要性
親より子が先に亡くなる、夫婦に子どもがいないまま高齢を迎えるといったケースがあります。このような場合には、一般的に想像している相続とは異なり、相続人が変わることがあります。
誰が相続人になるのかによって、遺産分割の相手や必要な手続きも大きく変わります。また、遺言書があるかどうかによって、その後の相続が大きく左右されることもあります。
子が先に亡くなっている場合の相続
通常、親が亡くなった場合の第一順位の相続人は子どもです。しかし、その子どもが親より先に亡くなっている場合には、相続の仕組みが変わります。
代襲相続とは
亡くなった子どもにさらに子ども(被相続人からみると孫)がいる場合には、その孫が亡くなった親に代わって相続人になります。これを代襲相続といいます。
老老相続では、80代や90代の親が亡くなるころには、その子どもも高齢となっていることが多く、病気や事故などによって親より先に亡くなってしまうこともあります。そのような場合でも、孫が代襲相続人となれば、相続はそのまま引き継がれます。
事例
相続財産 3,000万円
被相続人は父、長男はすでに死亡、長男には子(被相続人の孫)が一人、長女は健在というケースでは、次のような割合になります。
孫 1,500万円
長女 1,500万円
本来長男が受け取るはずだった相続分を、その子どもである孫が受け継ぐことになります。
代襲相続人がいない場合
一方、亡くなった子どもに子ども(被相続人の孫)がいない場合には、代襲相続は発生しません。
たとえば、独身の長男が親より先に亡くなり、子どももいなかった場合には、その長男の相続分は他の兄弟姉妹が相続することになります。
この場合は、代襲相続ではなく、残っている相続人同士で相続割合を決めることになります。
子どもがいない夫婦の相続
老老相続で特に多いのが、子どものいない夫婦の相続です。夫婦だけで長年暮らしてきた場合、「配偶者がすべて相続する」と思われている方も少なくありません。しかし、遺言書がない場合は必ずしもそうなるとは限りません。
兄弟姉妹が相続人になることがある
子どもがおらず、親もすでに亡くなっている場合には、配偶者と兄弟姉妹が共同相続人になります。
長年交流がなかった兄弟姉妹や、その兄弟姉妹の相続人と遺産分割協議を行わなければならないことも珍しくありません。
事例
相続財産 3,000万円
被相続人は夫、妻は健在、子はなし、夫に兄が一人、妹が一人というケースでは、次のような割合になります。
妻 2,250万円(四分の3)
兄 375万円(八分の1)
妹 375万円(八分の1)
つまり、妻だけで相続手続きを進めることはできず、兄弟姉妹全員で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書があれば相続は大きく変わる
子どものいない夫婦では、遺言書の有無が非常に重要になります。
兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、「すべての財産を妻に相続させる」という遺言書を作成しておけば、その内容どおりに相続することができます。
もちろん、遺言書は法律上有効な方式で作成されていることが前提です。不備のある遺言書では、かえって争いの原因となることがあります。
老老相続では相続人が想定どおりとは限らない
若い頃に考えていた家族構成と、高齢になったときの家族構成は大きく変化していることがあります。子どもが先に亡くなっていることもあれば、配偶者以外に兄弟姉妹が相続人となることもあります。
・想定していなかった相続人が現れる
・遺産分割協議が複雑になる
・相続手続きが長期間におよぶ
このような想定していない問題が起こることも少なくありません。特に老老相続では、相続人自身も高齢であるため、何度も集まって話し合うこと自体が大きな負担になります。
だからこそ、現在の家族構成だけでなく、将来起こり得る変化まで見据えて準備をしておくことが大切です。
子どもが先に亡くなる可能性や、子どもがいない夫婦の相続などは、決して特殊な事例ではありません。将来の相続人が誰になるのかをあらかじめ確認し、必要に応じて遺言書を作成しておくことで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
相続は、財産を引き継ぐ手続きであると同時に、家族への最後の意思表示でもあります。老老相続が増えている今だからこそ、ご自身の相続がどのような形になるのか、一度見直してみることをおすすめします。
