高齢化が進む現在では、夫婦ともに高齢であることが珍しくありません。そのため、夫が亡くなって相続手続きを進めている途中で、今度は妻も亡くなってしまうというケースも少なくありません。最初の相続手続きが終わらないうちに次の相続が発生すると、相続関係は複雑になります。
昨今、相続人自身も高齢であることが多く、体力や判断力の低下、手続きの負担などから、相続が長期化する傾向があります。老老相続の観点から、相続人が高齢である場合や、健康面に不安がある場合には、早めに司法書士などの専門家へ相談し、今後起こり得る状況も見据えながら手続きを進めることで、将来の負担やトラブルを大きく減らすことができるでしょう。
一次相続を放置すると二次相続が起こることがある
相続は、被相続人が亡くなったからといって自動的にすべての手続きが終わるわけではありません。
相続人の調査、財産の確認、遺産分割協議、不動産の名義変更、預貯金の解約など、多くの手続きが必要になります。
ところが、高齢の配偶者が体調を崩していたり、相続人同士の話し合いが進まなかったりすると、一次相続の手続きが長期間終わらないことがあります。
その間に配偶者が亡くなれば、新たな相続がはじまり、最初の相続と二つ目の相続を同時に手続きしなければならなくなります。老老相続では、このような事態は決して珍しいものではありません。
数次相続とは
一つの相続手続きが終わる前に、さらに相続が発生することを数次相続といいます。
たとえば、父が亡くなり、相続人が母と子どもだったとします。本来であれば、母と子どもで父の遺産分割協議を行います。しかし、その協議が終わらないうちに母が亡くなると、父の相続だけでなく母の相続も開始します。
すると、子どもは父の相続と母の相続の両方について手続きを進めることになります。
このように相続が連続して発生すると、相続人の範囲や必要書類も増え、手続きは通常より複雑になります。
数次相続では相続人が変わることもある
数次相続では、途中で相続人が亡くなるため、最初に予定していた相続人とは異なる人が手続きに参加することがあります。
たとえば、父の相続人が母と長男だった場合でも、母が亡くなれば、母の相続人が新たに手続きへ関わることになります。その結果、当初は二人で済むはずだった話し合いに、さらに相続人が加わり、遺産分割協議がまとまりにくくなることもあります。
また、不動産の名義変更や預貯金の解約なども、それぞれの相続関係を整理しながら進める必要があります。相続人が増えれば、それだけ必要な戸籍や書類も多くなり、手続きの負担は大きくなります。
一次相続をできるだけ早く終わらせることが、結果として相続人全員の負担を軽減することにつながります。
再転相続とは
再転相続とは、相続人が相続するか放棄するかを判断する期間(熟慮期間)のうちに、その相続人自身が亡くなった場合をいいます。
たとえば、祖父が亡くなった後、父が祖父の相続について承認も放棄もしないまま亡くなったとします。この場合、父が持っていた「祖父の相続を承認するか放棄するかを選ぶ権利」は、父の相続人である子どもへ引き継がれます。これが再転相続です。
数次相続が「相続手続きの途中で新たな相続がはじまる状態」であるのに対し、再転相続は「相続するかどうかを決める権利そのものが引き継がれる制度」と考えると理解しやすいでしょう。
再転相続では相続放棄の判断に注意が必要
再転相続で特に注意したいのが相続放棄です。
たとえば、祖父には多額の借金があり、父には借金がない場合です。子どもは祖父の相続だけを放棄し、父の相続はそのまま承認することができます。
一方で、祖父の相続を承認したあとに、父の相続だけを放棄することはできません。
父が祖父の相続権を取得していた以上、その権利関係も父の相続財産の一部として子どもに承継されるためです。
このように、再転相続では相続放棄の組み合わせによって結論が異なる場合があります。
制度を十分理解しないまま手続きを進めると、のちに希望どおりにならないこともあるため、慎重な判断が必要です。
