相続対策は、遺言書を作ったら終わり、家族信託をしたら安心というわけではありません。実際には相続対策は一度すれば永久に有効というものではないのです。
相続は、数年後、場合によっては十年以上先に発生することもあります。その間に家族の状況や財産の内容は変化していきます。以前は最適だった相続対策が将来も最適とは限らないはずです。
老老相続の場面では、時間の経過による変化が特に大きくなりやすいため、定期的な見直しが重要になります。
相続対策は作った時点で完成ではない
遺言書や家族信託などの相続対策は、その時点の家族構成や財産状況を前提に作られています。
たとえば、「長男に自宅を相続させる」とした内容が、のちに次男にした方がよいと改めることもあるでしょうし、「妻の生活を優先して財産を承継させる」としたが、妻に先立たれ、遺言内容が成立しないこともあるかもしれません。さらに、「特定の子に事業を引き継がせる」として、その子の意思が変わることもありえます。
このように、その時点では合理的な判断だったかもしれないことが、年月が経過して状況が変わることがあります。
相続対策で大切なのは、作ることだけではなく、その内容が現在の状況に合っているかを確認し続けることも同じくらい重要です。
家族構成の変化で相続対策が合わなくなることがある
高齢になるほど、家族構成は大きく変化していきます。
- 配偶者が先に亡くなった
- 子が亡くなった
- 孫が生まれた
- 養子縁組をした
- 子が結婚した
- 離婚や再婚があった
このような変化が起こることはごく一般的なことです。
相続対策を考えた当時は想定していなかった状況になっていることも珍しくありません。
老老相続では、自分より若い家族が先に亡くなるということも十分ありえます。
また、養子縁組によって相続人が増えれば、相続関係そのものが変わることもあります。
家族との関係が変わることもある
家族との関係も大きな要素になります。家族とでさえ、時間とともに関係は変化するものです。
- 同居して介護をしてくれるようになった
- 頻繁に面倒を見てくれる子がいる
- 長年疎遠になっている家族がいる
- 家族間の関係が改善した
といったことで関係や見方が変わるはずです。
相続対策は財産を分けるための仕組みですが、その根底には本人の意思があります。その意思が変わったのであれば、相続対策も見直した方がよいでしょう。
財産の内容は想像以上に変化する
ほかにも確認しなければならないのは、財産の内容です。
- 自宅を売却した
- 新しい不動産を購入した
- アパート経営を始めた
- 施設へ入居した
- 預貯金を取り崩した
- 相続によって新たな財産を取得した
一例ではこれらのケースが考えられますが、こうした変化があると、以前作成した遺言書が現状に合わなくなるはずです。相続させるはずの不動産を売却しているケースは実際によくあります。
また、財産の価値が大きく変わることで、当初想定していた公平な分配が実現できなくなることもあります。
特に近年は地価の上昇や物価高騰が著しく、財産価値の変動が大きいのは確かです。
相続対策は作成時点だけでなく、その後の財産状況も踏まえて定期的に見直してみてください。
見直しのタイミング
一概にこのタイミングがよいとは言い切れません。毎年見直さなければならないということでもありません。
目安としたいのは、家族構成に変化があったとき、大きな財産の売買をしたとき、施設入所や介護が始まったとき、遺言書を作成してから長期間経過したときには、一度内容を確認しておくことをおすすめします。
特に遺言書は、作成から十年以上経過しているケースも少なくありません。その間に家族や財産の状況が大きく変わっていることもあります。昔に作ったから大丈夫と考えるのではなく、現在の状況に合っているかを確認することが大切です。家族や財産の変化に合わせて見直しを行うことで、はじめて本来の役割を果たすことができるのです。
認知症になる前の見直し
老老相続で特に注意したいのが、認知症であることは言うまでもありません。相続対策を見直したいと思っていても、認知症が進行してしまうと新たな遺言書を作成できなくなる場合があります。
実際には、内容を変更したいと思っていた、家族の状況が変わっていたにもかかわらず、判断能力の問題から見直しができなくなってしまうケースがあります。
その結果、現在の希望とは異なる内容の遺言書が残ってしまうこともあります。
元気なうちに準備することが何より重要です。相続対策を行った後も定期的に内容を確認し、必要に応じて見直していくことで、将来のトラブルを防ぐことにつながります。
