養子縁組は子どもを迎える制度ですが、相続人や法定相続分が変わったり、遺留分に影響したり、相続において検討される制度でもあります。養子縁組は単なる戸籍上の手続ではなく、相続の仕組みそのものに影響を与える制度だということです。
実際に老老相続の場面で、養子縁組がどのように活用されるのでしょうか。
子どものいない夫婦と兄弟姉妹相続
老老相続で特に問題になりやすいのが、子どものいない夫婦です。
たとえば、夫婦二人で長年暮らしてきたものの、子どもがいないまま高齢になったケースを考えてみましょう。
夫が亡くなった場合、妻は相続人になります。しかし、それだけではありません。
夫の父母が既に亡くなっている場合には、夫の兄弟姉妹も相続人になります。兄弟姉妹が複数いる場合には、その全員が相続手続に関与することになります。
さらに兄弟姉妹自身も高齢になっていることが多く、以下のようなケースも少なくありません。
- 認知症になっている
- 施設に入所している
- 遠方に住んでいる
- 既に亡くなっており甥や姪が代襲相続人になっている
その結果、相続人の数が増え、遺産分割協議が非常に複雑になることがあります。
甥や姪を養子にするケース
こうした状況のなかで検討されることがあるのが、甥や姪との養子縁組です。
たとえば、子どものいない夫婦が、日頃から親しくしている甥や姪を養子に迎えるケースがあります。
養子となった甥や姪は法律上の子となるため、第一順位の相続人になります。その結果、兄弟姉妹相続とは異なる相続関係が生じることになります。
もちろん、養子縁組をしたからといってすべての問題が解決するわけではありません。しかし、「将来誰に財産を承継してもらいたいのか」という意思を反映させる方法の一つとして利用されることがあります。
孫を養子にするケース
養子縁組の相手として、孫が選ばれることもあります。
たとえば、長年同居している孫がいたり、将来的に孫に家を引き継いでほしいと考えていたり、孫が介護や見守りを担ってくれていたりする事情がある場合です。
養子となった孫は法律上の子となります。そのため、相続人としての地位を取得します。
実際には、祖父母と孫の結び付きが強い家庭も少なくありません。そのような場合には、養子縁組によって財産承継の方向性を明確にしたいと考えることがあります。
養子縁組だけで希望どおりになるとは限らない
養子縁組は万能な制度ではありません。
たとえば、「特定の人にすべての財産を渡したい」という希望があったとしても、養子縁組だけで実現できるとは限りません。養子となった人には相続権が与えられますが、他にも相続人がいる場合には、その人たちの権利も考慮しなければなりません。
また、養子縁組をしたことで新たな相続人が増えることになるため、場合によっては相続関係が複雑になることもあります。制度の仕組みを十分理解しないまま養子縁組を行うと、思わぬ結果につながることもあるのです。
親族間の感情的な対立が生じることもある
養子縁組は法的には有効な制度ですが、親族の受け止め方は必ずしも同じではありません。
なぜ甥だけが養子になったのか、なぜその孫だけが特別扱いされるのか、といった不満が生じることもあります。
特に相続が始まった後は、財産の問題、家族関係の問題、長年の感情の積み重ねが一気に表面化することがあります。そのため、養子縁組を検討する場合には、法律上の効果だけでなく、家族関係への影響についても考えておくことが重要です。
遺言と組み合わせて考えることも大切
養子縁組をしたとしても、将来の財産承継については遺言による準備が重要になります。
養子縁組は相続人を変える制度ですが、どの財産を誰に承継させるのかまで決める制度ではありません。
そのため、以下のような問題については別途検討しなければなりません。
- 自宅は誰に引き継ぐのか
- 預金はどのように分けるのか
- 老後の生活資金をどう確保するのか
老老相続では、残された配偶者の生活保障も重要なテーマになります。養子縁組だけに頼るのではなく、遺言や生命保険なども含めて総合的に考えることが大切です。
老老相続における養子縁組
養子縁組は、相続人の範囲や相続順位に大きな影響を与える制度です。
子どものいない夫婦、兄弟姉妹相続が予想されるケース、財産を承継してほしい親族がいるケースでは、有力な選択肢となることがあります。
一方で、養子縁組によって家族関係や相続関係が大きく変わることも事実です。
そのため、相続人を増やす制度として考えるのではなく、将来の財産承継をどのように実現するかという視点で検討することが重要です。
老老相続では、相続そのものだけでなく、その後の二次相続まで見据えて準備することが求められます。養子縁組も、その選択肢の一つとして理解しておくとよいでしょう。
