将来、もしかしたら認知症を患うかもしれません。意思能力を失ってしまう可能性に備えた対策を考えておかなければなりません。まずは、預金と株式についての対策です。
預金は凍結される
高齢の方が認知症などにより判断能力を失った場合、最も影響が出やすいのが預金です。
銀行口座は本人の意思に基づいて管理されるものですので、本人の判断能力に問題があると判断されると、自由に出金や解約ができなくなります。これがいわゆる「口座の凍結」といわれる状態です。
実際には、完全に形式的な凍結というよりも、家族による出金や手続きが認められなくなるというかたちで問題が顕在化します。たとえば、生活費や施設費用の支払いをしようとしても、本人以外では対応できず、結果として資金があっても使えないという事態が生じます。
このような状況になると、成年後見制度の利用を検討せざるをえなくなります。しかし、後見制度は一度開始すると原則として継続し、柔軟な資産運用や大きな支出についても制限がかかるため、事前に備えておくことが重要になります。
信託を利用した預金管理という考え方
こうした問題への対応として、家族信託を活用する方法があります。
信託では、あらかじめ財産の管理を家族などの受託者に任せる契約を結びます。これにより、本人の判断能力が低下したあとも、受託者が財産を管理し、必要な支出を行うことが可能になります。
預金については、信託専用の口座を用意し、その口座を通じて管理を行います。この仕組みを使うことで、認知症になった後でも、生活費や医療費などの支払いを継続することができます。
重要なのは、判断能力があるうちに契約しておくという点です。認知症が進行した後では、信託契約そのものができなくなるため、タイミングが極めて重要になります。
株式は売却できなくなるリスクがある
預金と同様に問題となるのが株式です。
株式は価格が変動する資産であるため、適切なタイミングで売却や運用を行う必要があります。しかし、本人の判断能力が低下すると、証券会社での手続きが進められず、売却ができなくなる可能性があります。
その結果、本来であれば利益確定できた場面や、損失を回避できた場面でも、何もできないまま時間が過ぎてしまうというリスクがあります。
また、配当金の管理や各種手続きについても、本人以外では対応が難しくなるため、資産全体の管理に支障が出ることになります。
株式の管理にも信託という選択肢
株式についても、信託を利用することで対応が可能です。
信託契約を結び、株式を信託財産とすることで、受託者が売却や管理を行えるようになります。これにより、本人の判断能力に左右されず、状況に応じた柔軟な対応が可能になります。
特に、上場株式を保有している場合には、価格変動への対応が重要になるため、あらかじめ管理体制を整えておく意義は大きいといえます。
使えなくなるリスク
預金も株式も、本来は本人のためにある財産です。しかし、認知症などにより判断能力が低下すると、「あるのに使えない」という状態が現実に起こります。
この問題は、単に制度の問題ではなく、生活そのものに直結する問題です。医療費や介護費用の支払い、日常生活の維持など、あらゆる場面で影響が出る可能性があります。
そのため、認知症への備えとしては、「相続の前段階」としての財産管理をどのように行うかが重要になります。
信託はそのための有力な手段の一つですが、あくまで検討すべき選択肢の一つとして位置づけ、財産の内容や家族の状況に応じて適切に考えていくことが必要です。
