相続が発生すると、遺産をどのように分けるかを話し合う遺産分割協議が行われます。しかし、誰でもこの話し合いに参加できるわけではありません。遺産分割協議に参加できるのは、法律上「相続人」と認められる人だけです。
反対に、本来相続人である人が一人でも参加していなければ、その協議は原則として無効になります。そのため、遺産分割を始める前に最初に行うべきことは、「誰が相続人なのか」を正確に確定することです。
実際の相続手続きでは、財産を調べる前に相続人を調査することが重要視されます。相続人が確定しないまま話し合いを進めると、後になって新たな相続人が判明し、遺産分割協議を最初からやり直さなければならないケースも少なくありません。
法律上の相続人は大きく二種類
法律上の相続人は、大きく分けると次の二つです。
- 配偶者相続人
- 血族相続人
この二つは役割が異なります。
まず、配偶者相続人とは、亡くなった人と法律上婚姻していた配偶者をいいます。一方、血族相続人とは、子、親、兄弟姉妹など、血縁関係にある親族を指します。この二つを区別して考えることが、相続の基本になります。
配偶者は常に相続人になる
配偶者には他の親族とは異なる特徴があります。それは、法律上の婚姻関係が続いている限り、常に相続人になるということです。
たとえば、亡くなった人に子どもがいても、両親が健在でも、兄弟姉妹がいても、配偶者は必ず相続人になります。これは相続順位とは関係ありません。相続順位が問題になるのは血族相続人だけであり、配偶者には順位という考え方はありません。
そのため、相続人を考える際には、まず配偶者がいるかどうかを確認し、そのうえで血族相続人を検討するという順序になります。
法律上の配偶者だけが相続人
ここで注意しなければならないのが、配偶者という言葉の意味です。相続でいう配偶者とは、法律上の婚姻届を提出している夫または妻を指します。
長年一緒に生活していたとしても、婚姻届を提出していない内縁関係では、原則として相続人にはなりません。
また、以前に婚姻していても、離婚が成立していれば元夫や元妻は相続人ではありません。
実際には、「何十年も連れ添ってきたから当然相続できる」と思われることがありますが、法律上は生活実態ではなく婚姻関係の有無によって判断されます。
この点は誤解が多く、相続相談でもよく質問される部分です。
血族相続人には順位がある
配偶者とは異なり、血族相続人には相続順位があります。すべての親族が同時に相続人になるわけではなく、法律で定められた順位に従って相続人が決まります。
順位は次のとおりです。
- 第一順位 子などの直系卑属
- 第二順位 父母などの直系尊属
- 第三順位 兄弟姉妹
重要なのは、上位の順位に相続人がいる場合は、下位の順位の人は相続人にならないということです。
たとえば、子どもが一人でもいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。子どもがいない場合に初めて父母が相続人となり、子どもも父母もいない場合に兄弟姉妹が相続人になります。
つまり、順位は全員が並ぶ順番ではなく、誰が相続人になるかを決める優先順位なのです。
相続人の確認は戸籍で行う
誰が相続人になるのかは、家族の記憶だけでは判断できません。前婚で子どもがいるケース、認知した子どもがいるケース、養子縁組をしているケースなど、見た目では分からない事情があることも珍しくありません。
そのため、実際の相続手続きでは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法律上の相続人を確認します。戸籍をたどることで初めて、すべての相続人を漏れなく把握することができます。
相続人の一人でも漏れてしまえば、遺産分割協議はやり直しになる可能性があります。だからこそ、司法書士などの専門家も、最初に相続人の調査から着手します。
相続手続きは財産を分けることばかりに目が向きがちですが、その前提となるのは「誰が相続人なのか」を正確に確定することです。遺産分割協議を円滑に進めるためにも、まずは法律上の相続人を正しく理解することが重要になります。
